【ポケモン×文芸】ポケモンノベルバッグ第6回「おまもりこばん」「こだわりスカーフ」「ヒウンアイス」
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- Опубликовано: 14 ноя 2024
- そうですか、と私は甘いアイスを食べているのに苦笑い。
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ポケモンノベルバッグ
・ポケモン世界の「どうぐ」をテーマにした小説集
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fine:おまもりこばん
「ご老公、お耳に入れたいことが……」
「む。何でしょう?」
「この事件。どうやら冤罪というのは本当のようです。鞘に血を付けた男がトキワの目付であるサカキに金を渡したところをみたという者がおりました」
「そうですか。目付が金に目が恨むとは……。やはりヤマブキ幕府も腐ってきているようですな」
「いかがいたしましょう」
「……少し、散歩に行きましょうか」
~トキワの森入口~
「その血に塗れた小判を、どうするおつもりですかな?」
「何奴⁉」
「散歩をしているだけの、ただの爺でございます」
「ふん。ただの爺がそんなことを言う訳がないだろう。おいお前たち、おもてなしして差し上げろ」
「へい」
「スケさん、カクさん。やっておしまい」
「はっ」
サカキのしたっぱが勝負を仕掛けてきた。
サカキのしたっぱはズバットとコラッタを繰り出した。
「いけっ。ウインディ」
「いけっ。ピジョット」
スケさんのウインディのしんそく。
あいてのコラッタは倒れた。
カクさんのピジョットのエアスラッシュ。
あいてのズバットは倒れた。
「控えい、控えいぃー」
「このお方をどなたと心得る」
「シオン光圀公であらせられるぞ」
「な、なにぃー」
「この紋所が目に入らぬか」
「は、ははーっ」
「此度の事件。到底許せるものではない。サカキお主、どう落とし前をつける?」
「も、申し訳ございませぬ。このサカキ、腹を切ってお詫びを……」
「そんなことをしても、冤罪で主人を失った者たちには何も残らぬ。心を入れ替え、生涯をかけて償い続けるのじゃ」
「ははーっ」
♪じ~んせい、楽ありゃ苦~もあるさ~♪
これを持っていれば、君もご老公になれる!
ポケモントレーナー必須のアイテム。おまもりこばん!
この番組はコガネ百貨店の提供でお送りしました。
ゆづる「こだわりスカーフ」
6対6のフルバトル、自分のサザンドラが倒れて、相手もこちらもあと1体となり、スタジアムはひりついていた。
中盤にバンギラスが立てたすなあらしで、相手のサーナイトはわずかにダメージを受けるが、それを以ってひときわ濃い砂塵が上空に消え去った。
こちらに残るはガブリアス、テラスタルはすでに切った。
持ち物はこだわりスカーフ、技構成は、げきりん、じしん、テラバースト、アイアンヘッド。
順当にいけばアイアンヘッド一択だが、相手は余裕そうだ。
「お客さん、お目が高いね」
そう言って店主はその水色のスカーフを私に見せた。
「何がどうこだわってるんですか?」
「実はね、このスカーフ呪われてるんだよ。何でもこだわりの強い職人が丹精込め過ぎて、死と引き換えに完成させた代物だそうだ。持ったポケモンは一つの技しか出せなくなる。だがその分、すばやさが上がるんだ」
使い方が難しい道具らしい。
「でもよ、何か一つこだわりがあるって言うのは、憧れるよな」
店主の意見に同意して、私はそれを買った。
前シーズンまではドラゴンタイプ統一でやってえきた自分も、今では手持ちにドラゴン以外のポケモンを加えている。
ブレたやつだと烙印を押されてファンも減った。
それでも、勝てなければファイトマネーも入らない。
手持ちのポケモンたちに申し訳ない。
仕方ないと言い聞かせてここまで来た世界大会、ここまで有名プレーヤーたちに当たらなかった幸運だけでここまで来たようなものだ。
一方で対面フィールドに構える私の幼馴染、ライバル、そしてフェアリータイプ使いのあいつに、残った手持ちはガブリアス一体。
もう……潮時かもしれないな……。
モンスターボールを眺めてそんな言葉が零れそうになった。
が、ぐっと飲みこんで全力でボールを投げた。
「俺らにゃこれしかねえんだよ!」
かっこいい、そんなドラゴンへの憧れだけでここまで来た。
逆境にもかかわらずここまで来た。
才能がなくてもここまで来た。
これからだってそうだろう。
「ガブリアス、よく聞いて。次のターン、お前が一発であいつを倒せなきゃ、俺らの負けだ――」
数秒の沈黙、相手がテラスタルオーブを構える。
「いけ、ガブリアス!」
ガブリアスが右斜めにフィールドを駆け、サーナイトとの距離を縮める。
「サーナイト! テラスタル!」
空中に上がったテラスタルオーブ、呼応してサーナイトの周囲がきらめく。
「ガブリアス! 覚悟決めろ!」
シンオウからイッシュ、カロス、アローラ、ガラル、そしてパルデア。
戦いの舞台が変わるたびにドラゴンは不遇だとか、強すぎるとか、さんざん言われてきた。
俺とガブリアスはそんな渦の中を一緒にもがいてきた。
――ドラゴンはな! 最強なんだよ!
結晶から出てきたサーナイトの頭には、青い水しぶきのテラスタルジュエル。
「げきりん!」
超高速でガブリアスが一気に距離を縮め、サーナイトを地に伏せた。
メリイ「ヒウンアイス」
夕方に近づきつつあるとある日の昼下がり、テレビ番組の打ち合わせを終えた私たちはヒウンシティの雑踏の中をライモンシティへ向かって歩いていた。西に傾きつつある太陽から強い日差しが注ぎ込まれている。
「ねえ、ちょっと寄り道していかない?」
隣を歩くカミツレが、サングラス越しに私を見つめながら言った。彼女は強い日差しから目を守るため、そして身バレを防ぐため、外に出るときは常にサングラスをかけている。
「かまいませんけど、どちらに?」
こっちこっち、と答えになっていない回答をしながら、カミツレは私の手を引いた。
「ここ、ここ」
寄り道先は本当にすぐ近くで、アイス屋だった。最近ブームなヒウンアイスを売っているお店だ。
「そっか、今日は火曜日でしたね」
「そうなの、普段はすぐ売り切れちゃうけど、火曜日はなぜか売れ残っていることが多いのよね。せっかくだから食べていきましょうよ。暑いし」
「そうですね。そうしましょう」
私たちはほんのりうきうきしながら列に並んだ。
数分後、私たちは目当てのヒウンアイスを手に入れた。そして私が注文したヒウンアイスが最後の一個だったようだった。
「間に合って良かったわね。運がよかったわ」
「ええ、危なかったですね」
言いながらアイス屋の庇の作る陰で、私たちはヒウンアイスを口に運んだ。
アイスの甘みが暑さと打ち合わせに疲れた体に染み渡った。ミルクの甘みが甘すぎずちょうどいい。そしてほんのりシャキシャキとした食感も楽しめる。さすがブームになるだけのアイスだ。仕事終わりはビールが最高なんていう人が大勢いるようだが、ビールなんかよりこれだろ、と私は思う。隣で食べているカミツレもおいしそうにアイスを頬張っている。
「本当においしい。でもちょっと名前がかわいそうよね」
「えっ、どういう意味です?」
「だってこれは悲運アイスなんかじゃないわ。幸運アイスよ」
ふふふ、とカミツレは私に微笑んだ。
そうですか、と私は甘いアイスを食べているのに苦笑い。
先ほどまで感じていた暑さは和らいだが、それがアイスのおかげなのか、はたまたカミツレのせいなのか、私にはわからなかった。