マゼランの未知なる大陸への挑戦 / 樽屋 雅徳

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Magellan’s voyage to unknown continent
Composer：Masanori Taruya
本曲は、世界一周を達成したとして有名なポルトガル出身のスペインの航海者フェルディナンド・マゼランをモチーフとし、樽屋 雅徳氏によって作曲されました。2004年5月に土気シビックウインドオーケストラにより初演収録され、その波瀾万丈な航海や美しい情景を彷彿とさせる曲想で発表当時から人気を博し、樽屋氏の代表曲として列挙する吹奏楽ファンも少なくありません。
しかし、本曲はそのタイトルとマゼランの偉大な功績のためか、しばしば大きな誤解を生んでいます。それは「マゼランが成し遂げた世界一周の旅を描いている」というものです。
まず、マゼランは世界一周を成し遂げた、という表現は正確ではありません。確かにマゼランは、時のスペイン王・カルロス一世の命により艦隊を結成し、1519年に西廻り航路で世界一周を目指す船旅を開始しました。しかし、1521年に到達したフィリピン諸島にて、現地住民の町を焼くなど強引なキリスト教への改宗活動を行ったため反感を買い、戦闘になってしまいます。マゼランの兵はスペイン式の甲冑に身を包み戦いましたが、およそ30倍の敵兵を前に敗北し、マゼラン自身も命を落としてしまいます。その後、残った艦隊をスペイン人のファン・セバスティアン・エルカーノが指揮することで船旅を継続させ、翌年にスペインに帰還したことで世界一周を達成しました。出発時約270名であったマゼラン艦隊の乗組員は、帰還時にはわずか18名となっており、その壮絶さが伺えます。
マゼラン自身は世界一周を成し遂げることは出来ませんでした。しかし、マゼラン艦隊帰還後に再び西廻り航路で世界一周航路を成し遂げた艦隊もまた、ありませんでした。彼の結成した艦隊が成し遂げたことで歴史に大きく名を残すこととなったようです。また、この文を読んでいただいた皆さんにはぜひ、死後の艦隊を引き継いだ影の功労者、エルカーノ氏の名前を覚えて帰っていただきたいと思います。
さて、楽曲に話を戻しまして、作曲者の樽屋氏は解説文に以下のように記しています。
「歴史にifはありませんが、もしマゼランの魂が現世に残り、世界一周を続けたなら…と"未知なる"マゼランの航海をイメージして作り上げました。 」
そう、世界一周の旅を描いている楽曲ではありません。これは筆者自身も楽譜を手に取るまで思いも寄りませんでした。マゼラン自身の無念はもちろん、彼が想像したであろう様々な航海の途上の困難、それにより疲れた心を癒やす美しい情景、悲願の達成、そしてまた新たな旅へ…という空想を描いた非常に心躍る曲です。
楽曲は、ともすると呑み込まれそうな波の表現から始まります。こちらは6/8拍子で記譜されていますが、そこにアクセントで4/4拍子かのように記譜されるメロディが加わっていきます。2つの異なるリズムで紡がれる音楽はさながら自然の力に抗う人間を表すかのようです。一度鎮まったかと思うと、打楽器による原始的とも言える力強いリズムとともに、激しい音楽が始まります。クラリネットから提示される16分音符とアクセントで奏でられるテーマは、戦いを表現していると考えています。再び打楽器が打ち込んだ後音楽は一転、静かな凪へと姿を変えます。穏やかな、そして大きな包容力を感じる音楽が金管楽器のコラールで奏される様は、雄大な自然とその果てし無さを想起させます。美しいフルートソロが奏でられた後テンポは再び上がり、フルートとクラリネットによって楽しげな舞曲が演奏されます。このメロディは20人を超す奏者が音域以外は全て同じ音を演奏しているため、曲調とは裏腹に非常に繊細な技術を要求されるのですが、そんなことは露知らず金管奏者は堂々とした和音で場を盛り上げます。舞曲が終わりを告げると楽曲も大詰め。美しいピアノソロによって場が整えられ、穏やかでどこか心の湧き立つような、トランペット奏者なら誰もが一度は憧れるソロが奏でられます。その湧き立った心持ちのまま、どこまでも大きな包容力をもって終曲します。
ロマン溢れる冒険の世界に皆さんをお連れするべく、指揮棒を振らせていただきます。どうかマゼランの夢に想いを馳せつつ、お楽しみいただけたら幸いです。
#ついはいウインドオーケストラ 演奏会パンフレット 曲紹介より抜粋
次回演奏会情報はコチラ！！！！！
ついはいウインド 第四回演奏会
2024年7月14日(日)
豊中市立文化芸術センター（大阪）開場13:30 開演14:00
入場無料🕊️
▼曲目
新緑の高原へ
美女と野獣
リバーダンス
LA-KI-LA-LA-KI-LI-RU-LAA
イエローマウンテン
今回は了徳寺佳祐　作/編曲集！
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