歸山榮治(帰山栄治) : 「劫」マンドリンオーケストラの為の(1974年初稿版)

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  • Опубликовано: 30 сен 2024
  • 作者は1943年5月福井県大野市に生まれ、2022年11月名古屋市に逝いた作曲家、指揮者。1962年名古屋大学文学部入部と同時にギターマンドリンクラブに入部、一年後指揮者となった。その後中田直宏氏に作曲を学び、クラブ内外で編曲を含め多くの作品を発表してきた。またチルコロ・マンドリニスティコ・ナゴヤをはじめとして、大学・社会人のマンドリ
    ン団体を数多く指導してきた経験を持ち、日本マンドリン連盟中部支部理事を務めた。作品は多岐に渡り、マンドリン合奏曲以外にもギター合奏曲、邦楽曲、合唱曲、劇音楽、舞踊音楽など多くの作曲、編曲活動に携わった。1981年名古屋市芸術奨励賞授賞。1984年及び1988年、名古屋マンドリン合奏団と共に団長兼指揮者としてソ連(当時)公演。同合奏団の1992年の中国公演と1996年のオーストラリア公演に音楽監督兼指揮者として参加。1997-2004年、マンドリン合奏トレーニングのためのEnsemble ESCHUEを主宰指導。2004年に「カエリヤマファイナルコンサート」を催。一昨年惜しまれて逝去。
     作品は初期の挑戦的な作品や西洋音楽の模倣などを皮切りに1970年代中期には独特な和声感と撥弦楽器の構造的特性やマンドリン属が持つ金属打楽器的な要素を活かし、更にそれらを集団体と捉える独自の音響設計的作風を確立した。それらは作品の根底に常に=現代社会の人間疎外の憂鬱の中で『人間の持つ宿命的な寂しさ』をしっかり見つめ、いかにして人間らしく生き抜くか=という音楽と人生の命題を宿し、作品に厳しさと温かさを与えて多くの若者たちを中心に支持された。80年代初頭の実験的ないくつかの作品を経て、80年代中期以降は侘(わび)寂(さび)に通ずる静謐の中に心理的描写を埋め込むような諦観とも言える美しさが独自の精神世界を産み、作風はギターを中心に据えるオーケストレーションなどが際立った。特にライフワークのように書き綴られてきたOuverture Historiqueの世界は氏の円熟に併せ、またその折々の時代を映して作品群のマイルストーンとなった。最後の同作となったNo.7においては梵鐘の音を模した響きから始まり、明確な調性感を持って未来を切り拓く者の為の音楽を改めて指し示した。コンコルディアでは一昨年
    の第50回定期演奏会で遺作となった「SUSTAIN-50」を初演している。
     本作は帰山氏の作品の中でもっとも特異な経過を辿った作品で、非常に多くの経過的異稿が存在している。今回演奏する初版は1974年に金城学院大学の委嘱により作曲されたもので、演奏されるのはそれ以来となるが、氏の作品の中でも最も複雑かつ深遠と言える難解な作品である。初演後1979年改作に際して、全面的な再構築と和声の整理が行われ、初稿版の後半約1/3が削除され、部分的に原型を留めるもののほぼ全面的な書き直しと言える程の荒療治が施された。
    この改作版は形を少しずつ変えながら最終的には2017年版で最終形を見るが初版における原石のごとき禍々しさは整理しつくされたが、結果的に氏の最高傑作と言われるまでになった。
     さてその初稿版であるが、最終改作版が「間」の音楽であるのに対し、「混沌」の音楽となっている事が最大のポイントと言えるだろう。両者が大きく異なるのは、①前半、後半に2回現れる4/4,5/4,7/4のポリメトリック進行部分。これこそが混沌の象徴であり本作の醍醐味とも言える。②後年カットされた後半部分。初稿版ではここが存在する事で曲が完結せずに
    「輪廻転生」を繰り返すまさに「劫」そのものとなっている。この2点により全ての部分が少しずつ「ズレ」の音楽として異形の世界を形成していっている。改作版が後年の帰山作品に見られる独特の諦観にも似た、『深遠=永劫』にを先取りした響きになっているのに対して、初稿版は『混沌=永劫』という、同じものを表現しながら真逆のアプローチとなっていると言い換えてもいいかもしれない。
     「劫」という言葉は梵語(サンスクリット語)のkal pa(カルパ)を「劫波」と漢語の音で写したのを略したものと言われている。意味は、きわめて長い時間、古代インドにおける時間の単位のうち「最長のもの」とされ、人間が認識できる時間に換算すると43億2千万年に相当するといい、想像し難い程無限の時間軸を表している。
    解説:横澤 恒
    参考資料:
    ・コンコルディア第47回定期演奏会パンフレット (2019)
    ・『ときの地域史』~インドにおける「とき」 --- 劫・輪廻・業 ---( 佐藤次高・福井憲彦編/ 山川出版社)
    ・仏教WEB入門講座 true-buddhism.... 世界大百科事典(平凡社)
    ・Hindu mythology, Vedic and Purānic (3rd ed.). (Wilkins, William Joseph , Tracker,Spink & co)

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