蛸の山越え

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  • Опубликовано: 1 янв 2025

Комментарии • 1

  • @工藤夏海-r8l
    @工藤夏海-r8l Год назад +2

    「蛸の山越え」
    画・話・朗読 工藤夏海
    2023年1月制作
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    蛸がいっぱいとれる町の話だよ
    その町では、みんなとれた蛸売って暮らしてたから、蛸は神様みたいなもんだったって
    町のお寺は年に一度蛸供養やってたから、蛸寺ってみんな呼んでいたっつも
    ある年、100年に一度の大豊漁が来て、獲っても獲っても追いつかないくらい蛸が獲れて、
    初めのうちはみんな大喜びだったんだけど、そのうち疲れてしまって
    蛸見るのも嫌になったんだと
    「こんなに獲れだら値段も下がるし、食べるのも飽きたから、捨ててしまうべ」
    そう言って、獲った蛸浜に捨てはじめたんだって
    「あんなにありがたがっていた蛸、捨てだりして、バチあだっと」
    蛸寺の坊さん言ったけど、
    「なあに、蛸なんて、怒ったところで墨吐くか真っ赤になるだげで、何も怖くね」
    とみんなして笑ったんだと
    しばらくしたら、夜中におっかない歌浜から聞こえてくるようになったんだって
    「ズルズルベッタン、ズルベッタン、今にみでろよズルベッタン、おめらおらだぢ食ってやる」
    捨てた蛸たちが襲ってくるんでないかと、怖くて怖くて、みんな眠れなくなったんだと
    そのうち町中に蛸の腐った臭い漂って、外に出るのも大変になったって
    そんでようやく町の人たち大変なことしたって気がついて、
    浜に捨てた蛸たち集めて砂さ埋めて、坊さん呼んで弔ってもらったんだって
    その晩、坊さんの枕元に大蛸現れて
    「今日は弔ってくれてありがとう。隣町の浜におらだの好物の蟹いっぺいるらしいから、今夜山越えていくのでよろしくね」
    そう言って消えたんだと。
    坊さん飛び起きて、町の人たちに起ぎろー起ぎろーって声かけて、みんなを集めたんだと
    「死んだ蛸たち大蛸になって今夜山越えるそうだから、山道にお札立てて、蓮の葉っぱの上さ魚のせて供えねばなんね」
    って言ったって。
    そんで真っ暗な中みんなで力合わせてその通りにしたら、その晩から怖い歌も聞こえなくなって、町中に漂っていた嫌な匂いもすっかり消えたんだって
    大蛸、無事山超えられたんだね
    それからは、その町では豊漁の時でもやたらめったら獲ることしなくなったって
    とんとがらっぽしめもした
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