にょーり君第二話「修行するぞ」

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  • Опубликовано: 8 фев 2025
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     須賀は見違えていた。3年生の引退そして顧問が変更されたことで2年生までの頃の彼と比較しておおよそ想像もできないほど前向きな性格になっていた。須賀自身が環境が変わるだけでそれほどまでに成長できることを知り驚いていた。また、今までの不甲斐ない自分への怒りと自分の力に対する自信から周囲の人間に対しても強気になった。前格闘部顧問と元主将はその可能性に気づいており、自覚するまで試合に出てはいけないとしていたが、新しい環境がパンドラの箱を開けてしまった。
     来たる中学武闘大会決勝戦当日、須賀は対戦相手となる九重八木七男について興味もなくただ目の前の相手に勝つことだけを考えていたため一切のリサーチを行わずこの日を迎えた。対して九重八木はこれまでの戦績や戦法を観察しどのように対処するか入念に策を練っていたがそうする過程で苛立ちを覚えていた。
    「ありゃ、完全に無自覚だ。おそらく気功だろうな、まったく安定していないが」
     九重八木は霊力のコマンドを好んで使っていた。優れたコマンドを持つものは若くして(九重八木の場合は5歳で)コマンドの存在を自覚し扱うようになることが多い。多くのものは教育課程を終え、実戦経験を積む中でその力の扱い方を学んでいく。教育課程にこのカリキュラムが組まれていないのは個人差が非常に大きいため、集団で教育するのは難しいとされたためである。
     偏に優れた者といえど、与えられた才のみで優れた成果を出す者はそうはいない。九重八木も同様、己の才を理解し十二分に発揮できるよう日々の鍛錬に励んできた。彼にとって須賀は観察をする中で自分よりも大きな才能を持ち、且つそれのみで他者を圧倒し己が世界の中心であるかの様に振舞う暴君に見えた。
    「心配ないよ。絶対勝つから。」
    神竜中学校オカルト研究会の後輩にそう言い残して九重八木は控室へ入っていった。
    ―中略―
     須賀は瞬時に理解した。自分が喧嘩を売った相手がこれまでにあってきたありとあらゆる人間をはるかに凌駕する力を持つ者であると。こんなことなら素直に言うことを聞いてごみはゴミ箱へ捨てるべきだったと後悔もしたが、後輩もいる手前、強気の須賀は引くことができなかった。
     結果、記憶も一部失うほど完膚なきまでに中本怜に打ちのめされるのは中学武闘大会からおおよそ半年後のことである。

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