【第120回作曲作品発表会】芽吹き / 三木柚穂
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- Опубликовано: 24 янв 2025
- 芽吹き / 三木柚穂(作曲専攻4年)
【芽吹き】樹木の新芽が出始めること。
物事に変化が訪れ、そしてその向かう先が荒廃だったとき、それを無理に避けることはできない。人は自分自身以外をコントロールすることはできないのだから。時間を巻き戻して元の状態にすることも到底できない。
その物事が自分にとって大きなものであればあるほど、喪失への後悔と執着は強くなる。だが、いくら固執したところで新しいものは何も生まれないのだ。
Ⅰ. 花は枯れる、そして腐る
密やかな序奏に始まり、それが静寂のまま閉じられるも、突然叩きつけるような音楽が姿を現す。そしてそれは勢いを増していき、渦を巻く濁流のような主部に到達する。どこにも救いの無い、終始混沌とした音楽。
枯れた花は、元には戻らない。
Ⅱ. 枯れた花に水を
attaccaで前曲から切れ目なく演奏され、切迫したAllegroと虚空を漂うようなAdagioをひたすらに繰り返す。たとえ時間が進んでいたとしても、その先に終着地点は無い。
枯れた花に、いくら水を遣っても無駄だ。
Ⅲ. 記憶と、あの日の思い出と
ゆらゆらふわふわと揺蕩う物憂げな音楽は、意識にヴェールを掛け、次第に過去へと誘っていく。記憶の奥底にあるのは、思い出。美しい…美しかった…思い出?
記憶は時間と共に薄れ、捻じ曲げられる。意識に掛かったヴェールは不透明さを増していき、もはや記憶を辿ることはできない。あの日あの時の出来事は、いつまでもそこに在るというのに。
Ⅳ. 花がまた咲くとき
混沌より生まれる救いの音楽。表面を覆う雑然とした音の連なりから、祈りの歌が顔を出す。
一度枯れ落ちた花が元に戻ることはない。けれど、同じ場所で再び花を育てることはできる。今度はもっと強く美しく咲けるように。大切に、大切に育てよう。
土も種も腐らせてしまうか、新たな芽を迎え、花開くまで育てられるか。それは、わたしたち次第。