【ポケモン×文芸】ポケモンノベルバッグ第4回「ふうせん」「ばんのうがさ」「クイックボール」
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- Опубликовано: 8 сен 2024
- 撮影を終え、私のパチリスの可愛さに微笑んでいたところ、ふと疑問に思ったことがあった。
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ポケモンノベルバッグ
・ポケモン世界の「どうぐ」をテーマにした小説集
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fine「ばんのうがさ」
「ばんのうがさってさ、何が万能なんだろうな?」
今話題の新人トレーナーのジム戦を観戦した後、ナックルシティをブラついていると隣から不意にそんな言葉が聞こえてきた。
「いきなりどうしたんだよ、ホップ」
「いや、あそこにいるおじさんのこと、お前も知ってるだろ?」
ホップの突き出した指の先には以前何度か話をしたことのあるジェントルマンがいた。
「ああ、あの人……って、まさかホップ。お前もあの人にばんのうがさをもらったのか?」
「ああ、そうだよ。っていうかほとんどのトレーナーがそうなんじゃないか? あの傘売ってる店をみたことないぜ?」
「……たしかに」
言われてみると確かにそうだ。あの傘を他で見たことはない。
「やっぱりマサルも見たことないんだな。……なおさらインチキ臭く思えてくるな」
「インチキって……。まあ、あながち嘘じゃないけれども」
「だろ? 晴と雨の影響を受けない、ってそれいまどきごく普通のありふれた傘だぜ? 万能でも何でもないっての。むしろあられを防げないんじゃ普通の傘以下のの可能性すらある」
「……たしかに」
「怪しいとは思ったんだよな。捨てたほうがいいかな」
「いや、捨てるのはさすがに……。何か役に立つ時が来るかもしれないし」
「……そうか? 今日のジム戦でも何の役にも立ってなかったじゃないか」
「……たしかに」
今日観戦した新人トレーナーVSキバナさんの試合で、新人トレーナーがばんのうがさを使っていた。
サダイジャのすなはき対策のつもりだったようだが、ばんのうがさはすなあらしには効果がない。
新人のやりがちなミスではあるが……。
「あの新人も可哀そうだよな。あらゆる天候の影響を受けないっていう、あのおじさんの売り文句を真に受けちゃったわけだろ?」
ここまで責められるとおじさんが少し可哀そうになってくる。どうフォローしようか?
「……まあ、売ってはないから売り文句ではないんじゃない?」
「……たしかに。……って、いやそこはどうでもいいだろ」
ごめんよおじさん、うまく助けてやれなかったよ。
「だいたいさ、ここに居ること自体良くないよな。キバナさんがサダイジャを使うのは周知の事実で、そのジムの近くでタダで配ってるわけだろ? おまけにさらさらいわもくれるじゃないか。そりゃすなあらしにも効くって思っちゃうよな」
「……さらさらいわがおまけなんじゃなくて、さらさらいわのおまけがばんのうがさだったと思う」
「だからそういう問題じゃないだろ!」
「そ、そうだよね」
ごめんよおじさん、手は尽くした。俺にはこれ以上は無理だ。
っていうかぶっちゃけホップが正論過ぎて同意しかできないよ!
「それにしても珍しいね。ホップがここまで怒るなんて」
「ギクッ。……そ、そうか? 普通だと思うぞ」
そう言うホップの目はカマスジョー並みの速さで泳いでいた。
……なるほど、そういうことか。
「……もしかしてホップも、キバナさん相手にばんのうがさ使ったの?」
「………………」
ホップは目を合わそうとしない。やっぱり図星だったんだな。まあ、これ以上黒歴史を掘り下げるのは可哀そうだ。このへんで勘弁してやろうか。
「俺、あのおじさんにどこが万能なのか聞いたことがあるんだけどさ。あの傘の万能なところはね、どんなポケモンでも傘を使えるってところなんだってさ」
「ふ、ふーん。なるほどね! そういうことだったのか。なーんだ。それなら納得納得。すっきりしたわ。じゃあこれでこの話はおしまいでいいな」
ホップは目を逸らしたまま話を切り上げた。
まあ、今のは俺の作り話なんだけどね。
ふう。なんとか、ジェントルマンとホップ、二人を救うことができました。めでたしめでたし。
ゆづる「クイックボール」
近年開発が進むノモセタウンが俺の故郷。カミナギ人の遺跡やグレッグルだらけの湿地と、シンオウ地方でもユニークなこのエリアは豊かな自然を売りに、観光業に乗り出している。
「でも圧倒的に田舎だ」
幼馴染のカワチはよくそう独り言ちていた。
「自然が売りっていうけどさ、都会ではないっていうだけじゃねえか」
「そりゃあ、こんな辺鄙なところにデパートなんてあるもんか」
「テレビも村に2,3個しかねえし、高いビルもない」
「プロレスが見たいなら大家さんとこ行きなよ」
「昨日で部屋の壁に3つ目の穴が開いたんだ」
「オマエんち、いい加減出てけって言われるぞ……」
学校が終われば町はずれの湿地で時間を潰した。
ヤンヤンマが頭上を飛んでいくのを何千何万と見てきた。
「なあ、アズマ」
「何?」
「オマエ、ウパー持ってたよな」
「え? まあ……」
自分に懐いて家に住み着いたウパー。捕まえたというわけではないが、ある程度言うことは聞いてくれた。
「イチョウでボール買ってさ、捕まえてみないか? ポケモン」
また始まった。カワチはたまにバカでかい話をする。
そのくせ何もしないのだが。
「ポケモンと一緒にさ、旅に出てみないか? いろんなとこ点々としてさ、自分たちの村に人入れてるだけじゃなくて、こっちから行ってやろうって話だ」
「バカ言え、できっこねえだろ。来たやつは金を落とす、迎えたやつの懐に金は入るもんだ」
だから大人は土地を見ず知らずのやつに売って、見ず知らずのやつに建物を建てさせ、そこに客を泊めるんだ。
「そうするしか、田舎のこんな村にデパートは立たねえよ」
「いつ立つか、立つのかどうかもわからねえけどな」
確かに、それが、俺たちが子どもであるうちに実現するメドはない。
村は忙しくなっただけだ。
「イチョウの店、新しくできたじゃん?」
「ああ、スーパーマーケットとかいうやつ?」
「あっこにボール売ってるのよ、買わん?」
まあ、カワチが大事ばかり口にするなら、俺はこいつの後ろばかり黙って追っているのだが。
棚に並んだ様々なボールを前にして、俺たちは困り果てた。こんなに種類があるなんて知らなかった。
「あの、あまりお金ないんで、できるかぎり捕まえやすくて安いやつってどれになります?」
店員は村に新しく来た人で、顔になじみがなかった。
「えっと……どんなポケモンを捕まえたいのかな?」
「……まだよくわからないです」
「そ……そうなのね……でも困ったわ……捕まえるポケモンによって性能は変わるから……」
店員には迷惑だっただろうが、いろんなボールを手に取って品定めしたが、私たちの軍資金は2,200円だった。
「何がいいんだがわかんねえな……手っ取り早く捕まえられるのはどれですか?」
すると、店員は堪忍袋の緒が切れたようだった。
「あのね、世の中一番楽な道なんてないの。ましてや誰かに示してもらえるなんて思わないことね」
そう言って目の前にモンスターボールをどっさりと持ってきた。
「これ、一番捕まらないやつですよね?」
「地道って知ってる?」
意地悪そうに微笑んだ、まだ20代ほどのその人だったが、子どもの私が後ずさりするには十分だった。
「それでも、早く捕まえたいんだ」
カワチは、ひるまなかった。
君、多分大物になるよ、知らんけど。
そう言って店員が出してきたのは青地に黄色い筋が交差した少し奇抜なボールだった。
「クイックボールって言うの。遭遇してすぐに投げれば投げるほど捕まえやすくなるボールなの」
「どういう仕組み?」
「専門家じゃないからわからないけど、そう書いてあったわ」
相手を弱らせることなく、すぐに投げて捕まえられるのだろうか?
「これにします」
だが、カワチはそれを選んだ。
後で聞けばその実デザインに心を奪われただけだった。
湿原の草むらに身を潜め、ポケモンを見ていた。
「ウパーは?」
「弱そう」
「ヤンヤンマ?」
「弱そう」
「一匹も持ってないやつが言うことじゃないだろ」
「あ、あいつなんかよさそうじゃね? あのおなかにもう一匹いるやつ、お得そうだし」
「俺たちじゃ捕まらねえって」
実際村の外れでもたくさんの種類がいた。弱い奴、強い奴……
俺たちはまだポケモンの怖さを知らなかった。
「あ、あいつ抜けてそうだけど、なんか強そうじゃね?」
カワチが見つけたのはスコルピだった。
「まあ、あいつくらいだったらワンチャン?」
「よし来た!」
カワチが勢いよく草むらから飛び出し、スコルピに走って近寄る。
そして――
「おら! 死ね!」
――殺してどうすんだよ!
カワチが投げたボールは何も気づいていないスコルピの背中に直撃した。
青い光の中にスコルピは吸い込まれ、私とカワチに緊張が走った。
ボールが一つ揺れ、二つ揺れ、三つ揺れる前に、スコルピが中から飛び出してきた。
「ああ! おれの小遣い2か月分!」
「言ってる場合か! 早く逃げるぞ!」
怒ったスコルピが私たちを見つけ、追いかけてくる。地面の緩い湿地は足をとられる。
こんなことならウパーを連れてくるんだった――そんなことを考えていると、足が何かにあたり、水気の多い地面に身体がたたきつけられた。
みれば寝ていたマスキッパの足――根か?――に躓いたらしい。
マスキッパが目を赤く光らせて私の方に口を開く。
ああ、死んだな。
つまらない場所で死ぬな。
そう考えるのなぜか怒りがわいて来て、私はその口にボールを思いっきり投げ込んだ。
ボールが三つ揺れて静かになった。
「捕まった……?」
「いや、今は逃げろ!」
親たちにしこたま怒られて、後日マスキッパの入ったボールを探すも見つからなかった。
何も手には残らなかったが、あそこで沸いた怒りはその後もたびたび私に襲ってきた。それが原動力となり、私とカワチはコトブキの大学に進むことになった。つまらないところで死なないよう、今度の休みに旅に出ようと思う。
メリイ「ふうせん」
私の名前はソノコ。
ソノオタウン出身で、最近成人したばかりの流行りを逃さない大人のお姉さんだ。ちなみに私は黒く長い艶々の髪が似合う美人である。
最近モンスタグラムでは、風船動画が流行っている。風船動画というのは、地面タイプの技が当たらなくなる風船という道具をポケモンに持たせ、ふわふわ浮いている様子を撮影するというものである。特にピカチュウやイーブイ、イワンコなどといった可愛らしいポケモンに風船を持たせた動画が人気だ。
私もパチリスで動画を撮ろうとなけなしのバドルポイントを使い、風船を購入した。
撮影を終え、私のパチリスの可愛さに微笑んでいたところ、ふと疑問に思ったことがあった。確かめるため、私はモンスターボールを投げる。ずしん、と重量を感じる音と共に、先日進化したばかりのカビゴンが出てきた。
とても眠そうにしていたのでカゴのみをあげて起きてもらった。
疑問というのは、重いポケモンでも風船で浮くのか、という至極単純なものだ。私はカビゴンに持たせ、数歩距離を取り様子を伺う。
「えっ」
地面との接地面を見ると浮いていた。パチリスほどではないが、確かに地面と体は離れていたのだ。すごいすごい、と写真を撮ったあと風船をカビゴンから預かった。そしてその時、ふと気がづいた。風船を持った私は浮いていないことを。
あれ? 私ってカビゴンより重いのかしら?