【MV】ポップしなないで「tempura」

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  • Опубликовано: 10 фев 2025
  • 「tempura」
    作詞 かわむら
    作曲編曲 ポップしなないで
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    「揚げたての現実を君に」
    対岸の火事、燦々たる有事、それも何やらの耳に念仏。
    バイトの休憩、通例アガる時間も最近は随分と短時間だ。
    空腹を満たして終わる時間のはずが、騒がしい来客と言葉のキャッチボール。ボールすら無くして滑稽な素振りとなることが多いのだが、今日の客はグローブすら持ってきていなかった。
    砂浜に空いた大きな空洞も、皮肉な程やけに青い空も、健康不良少女の生活にはさして影響がないはずだった。
    相も変わらず世界は終末きどり。
    つまりは、愛も、哀も変わらず。詩人も匙を投げる言葉のウィットネス。
    アルミホイルを頭に巻いた老人たちが建物から飛び出して、そのまま倒れるのを見た。
    彼らは電脳世界と混じり合い、極楽浄土へ向かう。幸福の在り方は人それぞれで、曖昧な平等さこそが真実である。
    「今夜ってことだよ。決行がさ。バット持って行くんだよジンちゃん」
    「それって夢物語って話しなかったっけ。夢物語というか、御伽噺のレベルなんじゃない」
    「夢はいつか叶うのよ、ジンちゃん。あいつらだってそれどころじゃないからさ」
    以前地底人を探しに行くと言って2日家に帰ってこられなかったことを思い出し、ため息をつく。
    たしかその時は、宇宙人で世間が騒いでいるのに地底に向かった我々がついに地球、マントル、内部構造、核の秘密を解き明かし、600人にも及ぶ地底人と近接でのリアルファイトの後、朝まで飲み明かした。
    あまりに飲みすぎたせいで前後の記憶が曖昧なのだけ残念だが。
    「シンプルに、地元のヤクザだよ。ヤクザの家に何があるか知ってるの」
    「知ってるよ。サカズキでしょ」
    他の打開策も見つからないことは事実である。
    ただ度胸だけは負けたくないと思い、地底人と死闘を繰り広げた時に使ったバットが何処にあるのかを思い出そうとしていた。



    割る必要の無い窓枠にバットを突っ込み、怪我をしないように縁に残ったガラスを綺麗にそぎ取る。
    靴は厚底、事務所の中に土足で踏み込むと、どうやらすでにめぼしいものは無くなっていた。
    人が、それ以外の者が荒らしたのかはついぞわからないが、微かに残る罪悪感にとっては都合が良い。
    「お、あるじゃん。ここにあったよ。重いっ」
    「本当にあるもんなんだ。夢と現実、どっちなのか分からなくなるよ」
    「現実はこっちだよ。いつだってこっちが現実、と思ったらそこが現実でいいじゃない」
    愚かで重厚な黒い塊。
    筒とは思えない複雑な機構。
    人を傷付けるにはあまりに悍ましく、強大なラスボスと戦うにはあまりに心細いハンパもの。
    でもまあ、正気を失いかけたとき自分を撃ち抜くには充分なんだろう、と思った。



    「ねえジンちゃん、あのさあ」
    「ジンちゃんって呼ぶのやめて。全然ピンと来ないんだけど。なんなの、日本人のジンって」
    「なんか意外だったからさ!日本のファーストネームは難しいんだよ、マキもマイも」
    「そんな言うならどっちでもいいよ。kが無くなってるだけだからさ」
    名前はマキで、日本人。
    そんなのとうに意味がなくなった世界、砂浜の果てで海を見る。
    後輩達は大穴に消えた。地底人の生存者を探しにいくらしい。
    地底人が残した、時を超える座布団がどうのこうの、と言ってるのを聞いて頭が痛くなったからそれ以上聞かないでおいたのだ。
    仲間が多い方がいいという常識は、集合意識の塗り替えによって消え去った。
    常に表の裏は表。事象は観測され次第事実になる。台風のような幻覚が質量を持つ。
    つまり、なんでもあり、ということである。
    私は、この砂浜に紙袋を1つ遺してここを発つ。
    行く末に何があろうか分かりはしないが、きっとより良くなる事はない。
    ただ、右にも左にも絶望はないことはわかりきっているのだが、何故こんなにも胸が躍るのか。
    「行くかねえ!我が街マサラタウンよ。行ったら何かあるだろうさ」
    「随分と無責任なことだ。ただ、まあ責任なんてもうここにはないか」
    お終いに向けたアポトーシスでは決して無く、それはきっと微かな希望の眩しさ、それすなわち後輩達の可愛くない笑顔が浮かぶからだろう。
    木の枝で砂浜に書き置きを残す。
    まるで天ぷらのように、揚げてすぐなら美味しい夢を。
    あとは任せたぜ、マイベストフレンド。

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