4人家族で住める最小限住宅。萩原修さんの「9坪の家」

Поделиться
HTML-код
  • Опубликовано: 12 дек 2024
  • 今回は4人家族で住める最小限住宅、萩原修さんの「9坪の家」について解説します。
    いわゆる最小限住宅と言われる「9坪の家」という有名な家があります。最近コンパクトな家が素敵だと言う若い方も増えていて、これからの家づくりに参考になると思います。
    萩原修さん著作の「9坪の家」という本があります。こういう本は建築家の人が自分の家・作品を語ることが多いですが、この本の著者はお施主さんで、設計者は別にいらっしゃいます。
    9坪の家は、1階の面積が3間×3間(5.5m×5.5m)で9坪です。2階には吹き抜けを挟んで床面積が6坪あり、延べ床面積は15坪(約50㎡)です。50㎡というと2DKぐらいの大きさで、すごく大きな面積ではないです。
    「9坪の家」を作るにあたっては、お手本にした家があります。それは1952年、今から72年前にできた家で、増沢洵さんという建築家の方が設計された、ご自分の家です。当時増沢先生は4人家族で住まれた家で、「自分たちが考える最小限住宅とは何か」をすごく考えて作られた家です。
    増沢先生は誰でも知っている著名な建築家ではなく、知る人ぞ知る存在です。古くは、吉村順三先生という住宅設計の超巨匠がいて、吉村先生の師匠がアントニン・レーモンド先生です。建築の三大巨匠の1人であるフランク・ロイド・ライト先生が、日本の帝国ホテルを設計する時にパートナーとして連れてきた先生です。
    そのレーモンド先生が日本に構えた事務所で働いていたのが、吉村先生と増沢先生です。もっと巨匠の方では、巨匠ル・コルビュジエの弟子である坂倉準三先生・前川國男先生も、その事務所にいました。近代建築(モダニズム建築)を日本に広げてくださった方々がいたのがレーモンド事務所で、増沢先生はどれだけ熱い理想のもとで極限まで設計したかがわかる先生です。そしてその増沢先生の自邸が、萩原さんが「9坪の家」を作るにあたり参考にした家です。
    1階はたった9坪、延べ床面積は15坪しかない家で、増沢先生は4人家族で17~18年ぐらい住まれました。その後、増沢先生はそこを離れて違う所で暮らしますが、その時に部下の淀川さんに「私のこの家を解体して、どこかに移築して建てろ」と言ったそうです。すごい師弟関係ですよね。このお家は今も現存していていたと思います。
    何が言いたかったかというと、「9坪の家」はものすごく設計を突き詰めた人たちが考えに考え抜いた最小限住宅だということです。「小さな家はここに極まれり」という、家のプロトタイプなんです。15坪の家でも、実際に子持ち家族がここで生き抜いた家だということを知ってほしいです。
    萩原さんは建築のプロではなくて、展示会をコーディネートする会社の社員だったそうです。自分が担当したイベントの中で、増沢先生の最小限住宅の骨組みを再現する企画があり、再現された骨組みを見て心を射抜かれたそうです。9坪の家は、そういう流れでできているんです。
    これを受けて萩原さんは、小泉誠さんというデザイナーの方に依頼して、増沢さんの家を再現して設計してもらいました。設計されたのがこの絵の家です。一辺が5.45mの真四角の2階建てで、2階の南側の一部は吹き抜けになっています。南側には大きなデッキがあって、2枚の引違いの大きな窓を介して部屋があります。畳数でいうと18畳ぐらいです。畳の部屋は1段上がっていて、階段があります。階段は、今をときめくリビング階段の原型みたいな感じです。2階はガランとしたオープンなスペースです。1階にはキッチン・トイレ・洗面・洗濯機・比較的小さなお風呂があるという構成です。
    萩原さんには、奥さまと2人の娘さんがいました。上の子がすみれちゃん、下の子があおいちゃんで、だからこの家は「スミレアオイハウス」と言うんです。
    この家は、家を作っていく過程でもいろんな物語があって、この本はすごく素敵な物語なので読んでみてください。今でも売っているのかはわかりませんが、古本はあると思います。小さな家を標榜している方や、反対に小さな家を全否定してる方がいたら、そんな人にこそ読んでほしいです。いろんな物語とともにこの家の素晴らしさがいっぱい書いてあります。
    そして、この家のマスタープランを考えた増沢先生は、1952年(昭和27年)にこれを考えるときに、3つの視点を持たれたそうです。1つ目が「豊かな空間を作りたい」。2つ目が「最新の設備を使いたい」。3つ目が「新しい生活の提案をしたい」です。未だに私たちはこの3つを大切に思っています。そのことを1952年、今から72年前に考えていたんです。めちゃくちゃモダンなんです。
    ここでは「豊かな空間」は、吹き抜け空間のことを言っています。今でも吹き抜けはあまりないし、吹き抜けのない家の方が多いぐらいです。当時の吹き抜けに対する印象はすごかったと思います。
    そして、当時は和式便器が多かった中で「洋風便器を使おう」「お風呂をちゃんと作ろう」と言っていました。この時代は家にお風呂はなくて、ほとんどみんなが銭湯に行った時代です。
    また、今でいうLEDみたいな感じで、電球ではなく蛍光灯を導入したり、新しい生活の提案で「接客重視の玄関はいらない」「家族中心の家にしよう」とも言っています。家族中心という概念をここに持ってくることがどれだけ画期的だったかというのは、今日だけでは語り尽くせないので、また違うところで喋りたいと思います。
    そして畳をなくしてベッドにしました。畳に布団を敷いて寝る時代に、ベットがいいと言うこと自体が、新しかったんです。当然居間も、ちゃぶ台ではなく椅子・テーブルの暮らしです。
    萩原さんは家を建てた当時、まだご存命だった増沢さんの奥さんに「実際のところ15坪の家はどうだったんですか?」と聞いたそうです。すると奥さんは「すごく楽しい暮らしだった」と、あの家で2人の子どもを育てたことを嬉しそうに話したそうです。
    「スミレアオイハウス」を私が紹介したかったのは、この面積感の中でも豊かな暮らしが過不足なくできることを、こういう家の経験を通じて感じてほしかったからです。
    萩原さんが見つけた土地は28坪で、ここに9坪のお家を建てました。萩原さんは1989年に結婚して、この小さな家を求めたのは、バブル真っ盛りから終わった直後ぐらいの、日本が調子に乗っている時代でした。その時期にこの家を建てたのが、萩原さんは素敵な人だなと思いました。
    土地を探す時は、プロトタイプの図面を持ちながら探したそうです。「それはまさにル・コルビュジエが、小さな家と僕が紹介している両親の家を、プロトタイプの設計を作ってから、この家を一番良い配置ができる、母・父に一番喜んでもらえる土地を探したように探した」ということがこの本に書いてあって、余計にドキドキしました。
    そして土地が買えて、そのプロトタイプの間取りでいくかと思ったら、やっぱり子ども部屋がいるよねと増築を考えたり、いろんなことを考えて面積を増やそうかと思ったり、萩原さんはすごく悩んだみたいです。良いと思って始まったけど、実際に考えた時にはやっぱり悩むし、気持ちが揺らいでしまうそうです。
    最終的に萩原さんご夫婦は、ル・コルビジェの愛弟子である前川國男先生の自邸を見に行きます。前川先生のお家はもっと大きくて素晴らしい家ですけど、その家にはプロトタイプの家と同じような感じでリビング階段があって、その階段の下にはドアがあったそうです。そのドアを見た瞬間に、奥さんは腑に落ちたそうです。
    結局最後、スミレアオイハウスは、靴脱ぎといってもいいくらいの小さな玄関を階段の下に設けます。増沢さんのプロトタイプは玄関がないような作りになっていますが、いろんなことを考えて自分好みに寄せながら、9坪の家が萩原さんご家族の家になっていきました。
    これから家づくりを考えていくにあたり、理想の家を追求するほど家は大きくなる傾向があり、お金もかかります。同時にこの本を読んでみると、大きな家は大事なものが薄くなってしまうという感覚なのかなとも思います。そして萩原さんは、2つの質問を投げかけられているとおっしゃっています。1つ目が「あなたはどのような生活したいのか」、2つ目が「誰と、どこで、どんな家に住みたいのか」という質問です。そうして行き着いたことが、生活に必要なものとそれにちょうど良い収納の大きさを考えることと、「テレビも車もない生活を選びたい」ということだとおっしゃっています。
    1990年代にテレビ・車が要らないというのはすごいですよね。そこに奥さんが共感してくれたのは、なおすごいと思います。奥さんもそれまでは高円寺の2DKのアパートに住んでいたんですけど、そこが53㎡だから家は3㎡が小さくなるんです。家が小さくなることに抵抗感を感じる中で行き着いたのが、「○○DKという言葉に惑わされるんじゃなくて、家は限りなくワンルームで良いんじゃないかと思った」ということだと書かれています。この人は建築家みたいに突き詰めて物事を考えている人なんだなと、すごく驚きました。
    実はこのお家は今も三鷹市にあり、「スミレアオイハウス」という名前の泊まれる家なんです。実際、私も現物は見たことがないので、一度女房と一緒に行って、泊まってみたいと思っています。
    みなさんには実際にこの家を見てもらって、サイズ感が先入観であることを知ってほしいです。小さくても豊かな暮らしができることを感じてもらいたくて、今回説明させていただきました。
    最後に、萩原さんがこの本の中で紹介している藤原智美先生という方が「家をつくるということ」という有名な本を書かれているんですけど、その本の副題が「後悔しない家づくりと家族関係の本」という名前です。そこで藤原先生が書かれている、萩原さんも紹介している一節を紹介します。
    「家をつくるということは、家族のほつれた糸をほぐし、切れかかった糸を新しくすることが可能な、唯一なものに見える。「家族を作り直す」ことでも(家づくりは)あるんだろう」
    つまり、「私たちはどんな生活していきたいのか」「誰とどこでどんな暮らしぶりをしたいのか」ということを考えることが大切です。それが「家族との関係性を作る」ということです。恐らくこの9坪の家は、家族仲が良くないと住みにくいと思います。でも家族の仲が悪くてもいいじゃないですか。私も家族の仲は良い方が良いと思って育ってきましたけど、「仲良くならなければいけない」というのも1つの呪いです。綺麗事ばかり言うつもりもありません。しかし、もし家族を作り直すこと、より良いものになっていくことに家づくりが関わっていくなら、突き詰めた家を通してならできる気がします。
    これからの家づくりをもう1回考えるにはすごく為になると思います。ぜひ参考にしてみてください。
    --------------------
    ホームページはこちらです。
    www.m-athome.c...
    新しいモデルハウスはこちらです。
    www.m-athome.c...
    高性能リノベーションはこちらです。
    www.m-athome.c...
    高性能規格住宅はこちらです。
    www.m-athome.c...
    見学会を受付中です。
    www.m-athome.c...
    ルームツアーはこちらです。
    / @morishita.athome_room...
    #モリシタアットホーム #9坪の家 #リビング #萩原修 #増沢洵 #建築 #空間 #設計 #姫路 #工務店 #注文住宅

Комментарии • 25

  • @toshima5462
    @toshima5462 5 месяцев назад +6

    いつも貴重なお話ありがとうございます。
    どうしてもスペック的な話が多いジャンルの中で、こういう本質的・哲学的な視野を提供してもらえるのは、家を建てたい人に有益なだけでなく、家づくり(乃至ものづくり)そのものに興味を抱くきっかけにもなると思います。応援しています。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +1

      過分なお言葉ありがとうございます。励みになります。

  • @樋口圭-f8f
    @樋口圭-f8f 5 месяцев назад +5

    以前コルビジェの生活最小限ハウスも紹介されてましたけど、こういったサイズ感、住んでみると意外と良いんですよね。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +1

      はい!そう感じて驚いています。

  • @こって牛-s5e
    @こって牛-s5e 5 месяцев назад +3

    率直な感想は豊かな9坪。私が物心ついたころ住んでいたのは空襲で焼け野原になったあと資材不足の中で無理やり建てた今で言う10坪ほどの平屋2K、風呂は独立していました。まことに貧しい最小限住宅でした。後に生まれた弟と計4人の暮らしは仲が悪いはずもなく小さな家でも楽しく暮らせました、すぐに高度成長期に入り建替えましたが。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +2

      父が田舎から姫路に出て来た時に住んだ家は、プレハブの現場事務所を利用したもので、住む込みの職人さんもいたので、両親とおさない弟の4人で小さな部屋に暮らしていました。思い出すのは、若かった父母の笑顔だけですね。

  • @hama-warabi
    @hama-warabi 5 месяцев назад +3

    夏は暑いと葵さんの談話にありましたので、
    秋以降に、民泊を楽しまれて、できましたら動画で感想を配信くださいませ。
    小さな家は、二階建てや三階建てが多いのですが、平屋ですと、どうなりますかね〜。
    贅沢な住まいは平家と言われますが。
    いつも専門的な内容の配信をありがとうございます。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +2

      コメントありがとうございます。確かに南面開口が大きくて、庇がないのでかなり暑そうですね。葦簀や簾が必要ですね。秋から冬の晴天に泊まってみたいです。

  • @kocoha8212
    @kocoha8212 5 месяцев назад +4

    森下さん、大変興味深いおはなし❣️
    収録、ありがとうございます👍
    おつかれさまです
    9坪の家🩵素晴らしいですね
    あらためて家とは何か?
    ハウスに求められる原点について想いを馳せました
    家は限り無くワンルーム!
    ほんとうにそう思います!
    スミレアオイハウスはそんなに以前の設計だったんですね😊
    ぜひまた取材動画をお待ちしております❣️
    私は立原道造さんのヒアシンスハウスも大好きです🪻こちらは4.5坪だったかなぁ
    アトリエにしてとてもモダンな造り付けと設計ですこちらは87年前の設計かしら?
    窓が角のところが全開してステキなんです💓埼玉の別所沼公園の中に有志で建てられています

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +2

      ヒアシンスハウス!なかなか興味深い建物ですね!ここも行ってみたいです。

    • @kocoha8212
      @kocoha8212 5 месяцев назад +1

      @@morishitaathome
      ぜひぜひ〜❣️
      東京からは電車で30分くらいだったと思います🚃
      でもかなりもう古くなっているでしょうね
      屋根の形状はいたってシンプルなのに
      雨風避けられる入り口🚪がこれまた良くて納得でした❣️

  • @国分寺のかとちゃん
    @国分寺のかとちゃん 5 месяцев назад +1

    ステキな小さいお宅!ご家族が幸せな時間や年をお過ごしになった事と思います。社長の幸せオーラいっぱいのご説明、ありがとうございます。スミレハウス、今度行ってみます☺
    ところで、、、おじょうさまのお名前が組み込んである固有名詞のくだり、sympathyは「同情」の意味合いが強いと思うのですが、おっしゃらてたのはintimacy「親しさ」だったのかな、と思いました。違ってたらすみません(汗)。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +3

      英語語彙力がなくてすいません。そうかーシンパシーは同情なんですね。その気持ち、よくわかる!っていう感じで使ってました。

  • @oyoyo8817
    @oyoyo8817 5 месяцев назад +1

    増沢洵さんは建築士の間では知らない人はいないぐらい有名ですよね。建築学校の授業でも取り上げることは多いみたいです。
    外から丸見えなので、家というよりいつも誰かがいてワイワイやってるサークルルーム(作戦会議室)的な印象かなぁ。
    たった9坪でも現代では求めるものがさらに変わってきている気がします。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +2

      これを土台にさらなるアレンジやチャレンジあるとたのしいですね!

  • @dai5san_dai5san
    @dai5san_dai5san 5 месяцев назад +3

    ご存知かもしれませんが。
    youtube.com/@user-py6jx1fh3e?si=ixhbgT_6JIPnSMy7
    本で読んで勝手に思い描いていた小さな娘二人がすっかり成人していることにしみじみしてみたり(笑)

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +2

      ご紹介ありがとうございます。ちょっとウルっとしてしまいました。

  • @たけちゃん-h7b
    @たけちゃん-h7b 5 месяцев назад +4

    最近最新設備の狭小住宅は人気のようですね。
    昔は凄い好きでした。
    東京以外の地域では
    小さな土地はあまりで今でも格安です。
    かなり熱いトークでしたが、
    50㎡だとちょうど我が家の物置車庫です。
    以前延床30坪の住宅に住んでましたが
    書斎は3畳で、6畳の部屋で家族4人で寝てました。
    狭い家は懲りました。
    一人暮らしか
    来客のない夫婦二人だけならありかもしれない。
    今は空き家で何かに利用しようか、
    仕事場にしようかと検討中です。
    習い事の先生の家が玄関=客間でした。
    すっごい金持ちの家でしたが、
    自分ではありえないと思いました。
    今の家は正面の玄関前に風除室があります。
    写真の家はリビングの窓が大きくてとても暑そうです。
    断熱用の内窓か障子戸が欲しいですね。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +2

      改良点はたしかにありますね。でもこういう暮らし方もあるんだと驚いたしだいです。モンゴルのゲルに泊まった時もそう感じました。

    • @たけちゃん-h7b
      @たけちゃん-h7b 5 месяцев назад +1

      @@morishitaathome
      最近障子紙の機能性に驚いています。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад

      @@たけちゃん-h7b 様内障子復活の兆しありですね。

  • @ウナギ犬-o1q
    @ウナギ犬-o1q 5 месяцев назад +3

    そんな狭い家に住むくらいなら、もっと田舎で仕事して、人間らしく生きたほうがいいと思う。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +2

      田舎の広い家もいいですね。

  • @ykon2723
    @ykon2723 5 месяцев назад +1

    建築費が高いから小さな家で我慢しないといけないのは、前世代のせい。
    デフレを許容して、放置した世代の、責任は、大きい。

    • @morishitaathome
      @morishitaathome  5 месяцев назад +1

      世の中の動きを読むのは大変ですね。