全盲の鍼灸師 家族とは…失いたくないもの 天職を離れ妻と歩んだ新たな道《私の家族》 (23/07/16
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- Опубликовано: 15 ноя 2024
- 福島県二本松市の渡邊健さん(55)は、30歳の時に網膜の細胞に異常が起きる進行性の難病「網膜色素変性症」を患った。健さんの目となり光となっているのが、妻の千春さん。二人の歩みから家族を考える。
<医学的には全盲>
「ちーちゃん、これ合っている?同じ靴下?違う種類?」
「同じ」
「こういうの確認してもらわないと分からないですよね」
大学時代の同級生だった2人。お互いに教員の道に進み、健さんが27歳、千春さんが25歳の時に結婚した。“天職”と言えるほどやりがいを感じていた教員の仕事。充実した日々の中で感じた目の違和感は、徐々に光を奪っていった。
<天職を離れるという選択肢>
健さんは「縦書きが読めなくなってくるし、子どもの顔も見えなくなるし、できないことがどんどん積み重なってくる。その中で不安を感じるんです」と当時の心境を語る。また妻の千春さんも「主人も不安だったと思う。見えなくなってくることも不安だし、周りが変わってしまったら嫌だなと思っていたと思う」という。
千春さんは健さんから「見えなくなっても、自分に対しての気持ちというのは変わらないんだろうか?」というようなことを言われたこともあったという。そんな不安に押しつぶされそうな心を、千春さんが支えてくれた。
千春さんに「教員を辞めてもいいんだよ」と言われた時に、辞めるという選択肢が目の前に登場したと健さんは言う。「こんな単純なことを、なぜ自分は選択肢に入れてなかったのかと思ったときに、自分は意外と危ないところにいたなと思った」と振り返る。
<新たな道へ>
46歳で教員を退職した後、視覚支援学校と大学院に通った健さん。鍼灸の国家資格などをとり、2021年に「銀の森治療院」を開業した。確かな技術と人柄に、多くの人が“健先生”を頼りにする。
利用者は「先生は色んな話を聞いてくれるので、心も身体も軽くなって帰れる。来る前日からウキウキで、楽しみにしている」と話す。
健さんは「新しい仕事をするうえで、家族が見てくれていることがエネルギー。簡単にいうと、かっこつけたい。かっこつけたい相手がいるのは幸せなこと」と話してくれた。
<妻への感謝>
全国の鍼灸師などが集まる学会に、2人の姿があった。健さんの研究論文が、鍼灸界で権威ある賞「高木賞奨励賞」を受賞した。
「千春さんがいなければ、そもそも僕は学びを深めようと思わなかった」と話す健さん。努力が認められた晴れの舞台でも、そばにはいつも千春さんがいた。
スピーチで健さんは「今、同席させていただいている妻・千春が、心身ともに支えてくれていることが、私事で申し訳ないがこの場をお借りして、伝えさせていただきます」と千春さんへの感謝をのべた。
千春さんは「感謝してもらっていると伝えてもらえるのは嬉しい。見えない画像も処理して、それで一つまとめるのはすごく大変なこと、目が見えている私はやってないですから。目が見えていないうちの人がやったわけなので、すごいなと思う」と話した。
<家族は失いたくないもの>
これまでの夫婦生活。変わったこともあるが、2人の笑顔は変わらない。
最後に2人に聞いた「家族とは?」
千春さん:「失いたくないもの」
健さん:「ずっと居心地よくて、ずっと続くと思うけど、実はそんなに人生甘くないから、はかないけど。千春ちゃんが言ったように、失いたくないものなんだな」
そして「家族は支えるもの」としてこう続けた
健さん:「自分の人生を支えている一部になっているのですか、僕は?」
千春さん:「なってます。ありがとうございます」