シリーズ:モモ②「生きることが虚しく感じる時」:【法話】小池陽人の随想録

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  • Опубликовано: 15 окт 2024
  • シリーズ:モモ、第2回目の法話は「生きることが虚しく感じる時」について。
    ある日のことです。私が、護摩堂でユーチューブの撮影を終え、片づけていると、一人の若い女性が護摩堂の入口に立っていることに気づきました。
    「ようお参りです。どうぞ中へ入ってお参りください。」そう声をかけながら近づいていくと、その女性が泣いていることに気づきました。私は驚いて「どうされましたか。大丈夫ですか。」と声をかけました。
    女性は、「少し相談にのっていただけますか。」と私に聞きました。わたしは「もちろんいいですよ。」と言って、お話をお聞きしました。
    その方がおっしゃるには、急に自分が生きていることが虚しくなるというのです。しかし、それが何故なのか分からないと言います。仕事も含め、私生活は順調にいっている。でも、何故か急に生きていることに虚しさを感じて涙が溢れてくるというのです。
    私はお話をお聞きすることしかできませんでした。そして、「つらい時、虚しさを感じるとき、いつでもお寺にお参りにきてくださいね。」とお伝えしました。
    その後、このことがずっと気にかかっていました。この女性のように、無気力になってしまうことや、生きていることに虚しさを感じてしまうという悩みを抱えている人は、現代で増えているのではないでしょうか。
    戦争や災害など非常事態における苦しさに対して、衣食住を確保できる収入と健康な身体を持ち合わせていながら、襲ってくる苦しさや虚しさ。
    飢餓や貧困、戦争に比べれば何てことはない苦しさと思われるかもしれませんが、この苦しさも同様に辛いのです。それは、先ほどの女性が言っていたように「原因が分からない」からかもしれません。
    戦争や災害による苦しさには、わかりやすい外的原因があります。それに対して、この苦しさは、わかりやすい原因がなく、何となく虚しく、何となく満たされないので、逃れようにも逃れられないのです。
    ミヒャエル・エンデの「モモ」という小説に、次のような話がでてきます。理髪師のフージー氏は、それなりに幸せに暮らしていました。店の評判もよく、お金持ちではないものの、使用人を一人雇うくらいの余裕はありました。ところがある雨の日、フージー氏はお客を待ちながら外を眺め、ふとこう思います。
    「おれの人生はこうしてすぎていくのか」フージー氏は考えました。「はさみと、おしゃべりと、せっけんとあわの人生だ。おれはいったい生きていてなんになった?死んでしまえば、まるでおれなんぞ、もともといなかったみたいに、人に忘れられてしまうんだ。」
    フージー氏は、別におしゃべりが嫌いでもなく、髪を切ることも好きでした。「けれどそんなフージー氏にも、なにもかもがつまらなく思える時があります。そういうことは、だれにでもあるのです」と語り手はいいます。
    そして、そんなフージー氏の前に、人々の時間を盗む「灰色の男」が現れます。灰色の男は、フージー氏に、無駄なことに時間を費やしているから、時間に余裕がないのだと詰め寄ります。そして、時間の倹約を勧めるのです。そして、灰色の男は、フージー氏に次のように言い放ちます。
    「時間の倹約のしかたくらい、おわかりでしょうに!たとえばですよ、仕事をさっさとやって、余計なことはすっかりやめちまうんですよ。
    ひとりのお客に半時間もかけないで、十五分ですます。むだなおしゃべりはやめる。年よりのお母さんとすごす時間は半分にする。いちばんいいのは、安くていい養老院に入れてしまうことですな。そうすれば一日にまる一時間も節約できる。
    それに、役立たずのセキセイインコを飼うのなんか、おやめなさい!(中略)とりわけ、歌だの本だの、ましていわゆる友だちづきあいだのに、貴重な時間をこんなに使うのはいけませんね。
    ついでにおすすめしておきますが、店の中に正確な大きい時計をかけるといいですよ。そこで使用人の仕事ぶりをよく監督するんですな。」
    こうして、フージー氏は時間を倹約するようになりました・・・。
    この灰色の男の存在は、「モモ」の物語における文明批判の核心部分です。フージー氏がそうであったように、我々の心に生じた隙間、虚無感が灰色の男を呼び込んでしまうことを示しています。
    忙しくしているのに、生きていることに実感がわかない。あるいは、時間を節約したはずなのに、余裕が生まれない。そのような経験をされた人は多いのではないでしょうか。
    川で洗濯をしていた時代に比べれば、洗濯機のある現代は、家事にかかる時間も相当減っているはずです。電車や車のおかげで、移動にかかる時間も短縮されました。なのに、現代人は暇そうには見えません。節約した時間に、新たな仕事がどんどんはいり、私達はますます忙しなくなっています。
     フージー氏のこのふとした時に感じる虚無感は、何故生まれるのか。
    それは、自分という存在が過去・現在・未来と続いていて、人生全体として自分の価値を認識しようとしてしまっていることが一つの原因ではないでしょうか。
    ■ミヒャエル・エンデ著 「モモ / 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語」を紹介するページ:絵本ナビ
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