昭和11年2月20日に行われた第19回衆議院議員総選挙に際して、岡田啓介首相が行った演説です（レコード「総選挙に際して」（昭和11年1月末〜2月初に録音））。二・二六事件直前の岡田首相の肉声をお聞き下さい。
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　私は内閣総理大臣　岡田啓介であります。去る1月21日、衆議院が解散を命ぜられましたので、帝国憲法の定むるところに従い、来る2月20日、衆議院議員総選挙が行われることとなりました。
　政府が衆議院の解散を奏請するに至りました理由は、当時直ちに声明いたしましたとおりであります。私は、今日の重大なる時局に善処し、愈々国運を振張し、以て聖明に応え奉る所以(ゆえん)の途は、実に挙国一致の協力によるの他なきを信じ、この方針の下に、組閣以来閣僚相率いて最善の努力を尽くし来ったのであります。現内閣は、一党一派に偏せず、真摯なる全国民の支援を得て、政策の実行に努めんとするものであります。私は、国家内外の現状に鑑(かんが)み、各政党政派は各々小異を捨てて大同につき、虚心坦懐、是を是とし非を非とし、ただ一意君国のため臣民翼賛の任を尽くさるることを信じて疑わないのであります。
　政府は、既に前後二回の帝国議会においてこの所信を披瀝(ひれき)いたしたのでありますが、衆議院における審議の経過を見まするに、遺憾ながら、いささか国民の期待に添わざるやの感なきを得なかったのであります。而して更に、その後における政情に察しまするに、衆議院の実情は、そのまま議会を継続いたしまするも、到底円滑なる国政の運用を期し難きものあり、と考え...